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【説明しない勇気86】強みの押し売りを卒業せよ。医師に「この薬しかあり得ない」と言わせる、弱みを強みに転化するクロスSWOT交渉術

スペック勝負に限界を感じていませんか?「良い薬なのに選ばれない」の正体

製薬業界の第一線で活躍するMRやMSLの皆さん、

そしてチームの成果を最大化するために

日々現場を鼓舞しているマネージャーの皆さん。

多忙な医師へのディテーリング(情報提供)において、

このような壁にぶつかってはいないでしょうか。

 

 自社製品のエビデンスや強みを

 一生懸命説明しているのに、

 医師の反応がどこか冷ややかだ

 

 競合製品に比べてここが優れていますとアピールしたのに、

 最後は『検討しておきます』と一蹴されてしまう

 

 競合が強すぎて、そもそも自社製品を提案する

 隙間がどこにも見当たらない

 

どれほど製品知識を磨き、

流暢な話法でディテーリングを行っても、

医師の懐に潜り込めない。

こうした悩みを持つMRは非常に多く存在します。

 

私自身、製薬会社の現場を経験し、

数多くのプロモーション活動を分析してきましたが、

かつては 

自社製品のこの弱み(薬価が高い、副作用の懸念など)

がある限り、競合の壁は崩せない

と、アプローチの前に諦めかけていた時期がありました。

 

しかし、営業活動が空回りしてしまう最大の原因は、

製品のスペックを「直感」や「自社都合の思い込み」だけで

アピールしようとしている点にあります。

感覚に頼らず、冷徹に「勝てる戦場」を導き出す

マーケティングの基本フレームワークこそが、

今回ご紹介する

「SWOT(スウォット)分析」

を活用した戦略的交渉術です。

 

 

SWOT分析の落とし穴――「マトリクスを埋めただけ」の棚卸しで終わらせない思考法

SWOT分析という言葉自体は、

多くの企業研修やマーケティングの勉強会で

耳にしたことがあるでしょう。

これは、

 

 強み(Strength)

 弱み(Weakness)

 機会(Opportunity)

 脅威(Threat)

 

の4つの視点から、

自社製品の立ち位置と市場の状況を

整理する基本ツールです。

しかし実際の現場では、

マトリクス(表)をきれいに埋めて満足し、

「だから、どうするのか?」

という具体的なアクションに

繋がっていないケースが散見されます。

これでは、単なる情報の棚卸しに過ぎません。

本来の目的は、この整理された要素を掛け合わせ

、具体的な「戦術」を導き出すことにあります。

特に製薬業界において

SWOTの要素は以下のように整理されます。

 

 

S:強み(内部要因)

高い有効性、特異的な作用機序、

上市前からの好意的な医師評価、

大規模臨床試験のエビデンス、

専門MRやMSLの配置 など

 

 

W:弱み(内部要因)

副作用の懸念、剤形や用法の不便さ、

知名度不足、薬価の高さ、

フォーミュラリー(推奨薬)での未採用 など

 

 

O:機会(外部要因)

診療ガイドライン改訂による推奨拡大、

新たな適応症追加の可能性、

競合の副作用や供給制限、

地域医療構想による重点施設の集約 など

 

 

T:脅威(外部要因)

類似薬の上市、画期的な新治療法やデバイスの登場、

公的保険制度の改定による処方制限、

ネガティブな風評の拡散 など

 

 

これらを単なる事実として眺めるのではなく、

強み・弱み(自社)と、機会・脅威(市場)を

掛け合わせる

「クロスSWOT」

を行うことで、初めてMRやMSLが現場で迷わず

武器として使える具体的なストーリーが完成するのです。

 

 

弱みを武器に変えた実体験――エビデンス不足を跳ね除けた「クロス戦略」の実践例

では、このクロスSWOTをどのように実務に活かし、

ディテーリングを劇的に進化させるのか。

4つの戦略パターンの掛け合わせ方を解説します。

 

1.「S × O」(積極的攻勢): 

 自社の強みを活かして、市場の機会を最大限に捉える。

 

2.「W × O」(改善型戦略):

  弱みを克服して、市場の機会を活かす。

 

3.「S × T」(防衛戦略): 

 自社の強みを使って、市場の脅威に対処する。

 

4.「W × T」(回避・撤退): 

 最悪の事態を招かないための対策、

 またはアプローチの優先度を下げる。

 

 

ここで、私が過去にある製品を担当していた際の

実例をご紹介します。

当時、私たちの製品は以下のような状況にありました。

 

 強み(S): 

全国のアカデミア(オピニオンリーダー)を

活用した地道な研究活動ネットワーク

 

弱み(W): 

日本人での大規模な臨床試験の

エビデンスがまだ存在しない

 

機会(O):

 ガイドラインやエビデンスを

極めて重視する

「EBM(根拠に基づく医療)」

の考え方が急速に普及し始めている

 

 

このまま何もしなければ、

「エビデンス重視の時代(O)」において、

「エビデンス不足(W)」という弱みが露呈し、

他社競合にシェアを奪われる一方でした。

 

 

そこで私達は、

「S(オピニオンリーダーとの連携)」と

「O(エビデンス重視の時代)」

を掛け合わせた「S×O戦略」として、

全国の学会幹部クラスの医師による

アドバイザリーボードを即座に立ち上げました。

 

さらに、

「W(エビデンス不足)」を「O(EBMの時代)」

で克服する「W×O戦略」として、

日本人の大規模臨床試験の計画を

そのボードメンバーと共に策定したのです。

 

この明確な目標に向けて組織的に取り組んだ結果、

KOL(キーオピニオンリーダー)に対する

製品認知が飛躍的に高まりました。

 

そして数年後、この日本人を対象とした

大規模臨床試験の結果は、

国際的に権威ある医学専門誌に掲載され、

国内の主要な診療ガイドラインにも

引用される快挙を成し遂げました。

 

この戦略的な一貫性こそが現場の士気を引き上げ、

結果として売上でも大きな成果を生むことができたのです。

 

 

勝てる戦場を地図で見極め、医師に必要とされる「真の戦略的パートナー」へ

売上が伸びていくための仕組みづくりは、

正しい現状認識から始まります。

SWOT分析は、机の上で表を作るための作業ではなく、

今いる場所と目指す場所の「距離」を測るための方位磁針なのです。

 

1.SWOT分析を単なる「棚卸し」で終わらせず、

  掛け合わせる「クロスSWOT」で戦略を導き出す。

 

2.弱み(W)を隠さず、市場の機会(O)と

  掛け合わせることで、医師の信頼を勝ち取る

  トークへと昇華させる。

 

3.一方的な説得を捨て、質問型交渉術を用いて

  「医師が抱える臨床課題への解決策」

  として製品を位置づける。

 

 

もしあなたがチームを牽引する

上司やマネージャーの立場であるならば、

部下に

「なぜこの施設を重点化するのか」

「なぜこのデータを今提示するべきなのか」

という、身近な戦略的思考(マーケティング志向)を

日頃から語ってあげてください。

 

MRやMSLを単なる

「情報を届ける伝達者」で終わらせるのか、

それともルールや市場を味方につけて

医師の課題をクリアする

「価値の伝道者」へと育てるのか。

 

その一歩は、SWOT分析という地図を携えて、

誠実かつ戦略的に医師と向き合う姿勢を

身につけることから始まります。

コンプライアンスの枠組みを味方につけ、

医師から

「あなただからこそ、次の治療を相談したい」

と言われるための具体的なトークスクリプトの設計法や、

クロス戦略の実践について、

さらに深い学びを始めてみませんか?

 

 

プロフィール

杉浦敏夫(すぎうら・としお)

1965年、長野市生まれ。名古屋大学工学部卒業後、国内の製薬会社に入社。

プロダクトマネージャーとして大型新薬の上市を手がけた後、学術部、プロダクトマーケティング部、臨床開発部、教育研修部の部長、営業部門では東京支店長などを歴任する。

日本人を対象としたエビデンス構築の必要性に着目し、多くの臨床試験の企画・運営を主導。そのうち代表的な2つの研究の結果は、国際的に権威のある医学専門誌に掲載され、国内の診療ガイドラインにも引用されている。

数多くのトップ・オピニオン・リーダーとの対話を通じて「質問の力」の本質に触れ、営業力強化の分野で著名な「質問型営業®」開発者・青木毅氏に師事。

現在は、第一線で活躍する営業職やマネージャーを支援する取り組みに注力している。趣味はカメラ、ソフトボール、ゴルフ、温泉旅行。

人気PodCast番組『青木毅の質問型営業』に著者として出演(第540回, 2025年9月19日配信)。

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