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【説明しない勇気78】「規約・ガイドライン」に縛られるMRから医師に頼られるパートナーへ!ルールを最強の武器に変える「質問型ディテーリング」

コンプラ違反の恐怖で言葉が詰まる……そんな「守りのディテーリング」になっていませんか?

「このケースは適応外だと思うけど、実際のところどうなの?」

「他社の薬と比べて、どっちが使いやすい?」

医師との面会中、このような質問を投げかけられて、

背筋が凍るような思いをしたことはありませんか? 

 

「薬機法に触れるかもしれない」

「販売情報提供活動ガイドライン違反で報告されたらどうしよう」

 

……そんな恐怖が頭をよぎり、

つい「申し訳ありません、それはルール上お答えできません」

 

と、その場をシャットダウンしてしまう。

結果、気まずい沈滅が流れ、医師からは

「じゃあいいよ、いままでの薬を使うから」

と冷たくあしらわれてしまう。

 

多くのMRやMSLの皆さんが、

日々このような厳しい現実に直面し、

コミュニケーションの壁に悩んでいるのではないでしょうか。

 

私自身、かつて現場の最前線で活動していた頃は、

プロモーション規制が一段と強化された時期を

経験しました。

 

「話したい情報ほど、話せない」

「ルールが細かすぎて、何を話せばいいのか分からない」

 

と、医局の廊下で立ち尽くしたときの

血の気が引くような絶望感は、

今でも鮮明に覚えています。

 

しかし、ここで多くのMRやMSLの皆さんが

大きな誤解に陥ってしまいます。

それは、法律や規約を

「自分たちの活動を縛る鎖」

だと捉えてしまうことです。 

 

実は、ルールを正しく理解し、

思考の起点を変えることができれば、

薬機法やガイドラインは活動の制約ではなく、

医師と深い信頼関係を築くための

「最強の武器」

へと180度反転させることができるのです。




規約は「活動の制限」ではない!医師と深い信頼を築くための「共通の同心円」

そもそも、なぜ

「薬機法」や「販売情報提供活動ガイドライン」

が存在するのでしょうか。

 

 医療用医薬品の情報提供は、

医師の診療、そしてその先にいる患者さんの命に

直結する極めて重大な行為です。

 

だからこそ、情報の正確性や透明性が

何よりも問われます。

つまり、これらは企業都合のプロモーションから

医療を守り、健全な関係を築くための土台なのです。

 

薬機法では、品質・有効性・安全性に関する

正確な情報提供義務(第8条)や、誇大広告の禁止(第66条)、

未承認医薬品や承認外の効能効果などの提供禁止(第68条)

が厳格に定められています。

 

さらに、厚生労働省が示した

「販売情報提供活動ガイドライン」では、

科学的根拠に基づく情報提供や承認範囲内での説明、

未承認情報の厳格な取り扱いなどが、

現場の活動に直結する原則として

求められています。

 

これらを「話してはいけない制限」と捉えると、

ディテーリングはただの

「説明の自主規制」

に終わってしまいます。

 

しかし、プロフェッショナルは違います。

説明に踏み込む前に、医師のニーズを

「質問」によって丁寧に探るためのガイドとして、

ルールを活かすのです。

 

ここで、現場でよくある「失敗例」と、

信頼を勝ち取る「成功例」のトークを対比させてみましょう。

 

 

× 失敗例(説得型・シャットダウン型)

 医師:

「この薬、適応外の疾患に対するデータってないの?」 

MR:

「あ、先生、それはガイドラインで厳しく禁止されておりますので、私からは一切お答えできません!」 

医師:

「……あ、そう。じゃあもういいよ」

 

自分の都合(違反を避けたい)だけで会話の扉を閉ざしてしまい、医師の関心を無視した最悪のコミュニケーションです。これでは「深い話ができない人」と判断されてしまいます。

 

 

◎ 成功例(共感・質問型) 

医師:

「この薬、適応外の疾患に対するデータってないの?」 

MR:

「はい、ございますが、先生、ちなみに、なぜそのようなデータが必要なのですか?」

医師:

「実は、既存の薬だとこういう副作用が出て、次の選択肢に困っていてね……」

MR:

「なるどほ、そういうことですね。適用外のデータは私が直接お伝えすることができないのですが、もし、先生が本当に必要ならばメディカル部門に確認します。どんなデータが必要か詳細をお教え頂けますか?」



 

いかがでしょうか。

承認外のデータを一方的に「説明」することはできませんが、

医師がなぜその質問をしたのかという

「意図や背景」を質問によって聞き出すことは、

何らルール違反ではありません。

むしろ、医師の困りごとに寄り添い、

お役立ちを実践するための正当なアプローチです。

ルールがあるからこそ、「伝える」のではなく

「聞き出す」という質問型のスタイルが真価を発揮するのです。




「監視モニター」も恐れる必要なし!組織で“再現性ある対応力”を養う2つのステップ

現場のMR・MSLをさらに萎縮させているのが、

厚生労働省が設置した

「監視モニター制度」の存在かもしれません。

 

全国の医師や薬剤師がモニターとなり、

不適切な情報提供がないかを当局に報告し、

違反を是正する仕組みです。

 

しかし、この制度を必要以上に恐れる必要は

まったくありません。

 

日頃から「自社の都合」ではなく

「相手へのお役立ち」を軸に据え、

「説明しない勇気」を持ち、相手への共感を軸にした

適正な情報提供活動を行っていれば、

この制度は恐れる対象にはならないのです。

 

重要なのは、個人が現場で迷わないために、

ルールを守りながら結果を出す

「再現性のある対応力」を組織全体で養うことです。

そのために今日から実践できる具体的な2つのステップを示します。




  • ステップ1:質問中心の「正しいトークスクリプト」の作成 

多くのスクリプトは自社製品の「説明」ばかりが並んでいますが、

これでは会話が分岐した際に対応できません。

「現状」「欲求」「解決策」「欲求の再確認」

というステップをすべて「質問」の形で設計します。

会話の主導権は常に質問する側にあります。

質問が主軸であれば、会話の流れを一本の軸に沿って

進めることができ、仮に話が逸れても

自然と本筋に戻すことができます。

 

  • ステップ2:ロールプレイによる反復訓練の徹底 

スクリプトを紙の上だけで終わらせず、

上司や同僚を医師役に見立て、実際の対面やWEB面談を想定して

徹底的にロールプレイを行います。

特に、未承認情報や他社製品との比較を求められた際、

焦らずに

「確かに、そこは重要な部分ですよね。

 ちなみに先生は、なぜ……」

と、共感から質問へとスムーズに移行できる

「型」を身体に染み込ませるのです。

 

この2つのステップを繰り返すことで、

現場の対応力は格段に向上し、

不適切ディテールによる通報リスクを

根本から排除することができます。

 

不適切ディテールの報告は、単なる規約違反というよりも、

自社都合の売り込みがもたらす

 

「不誠実な姿勢」

 

への反感から生まれるケースが

圧倒的に多いのです。




すべてのルールは「お役立ち」のために。正々堂々と価値を届けるプロフェッショナルへ

「ルールを守る」ことと「成果を上げる」ことは、

決して反発し合う二項対立ではありません。

むしろ、重なり合う同心円のようなものです。

 

コード・オブ・プラクティスや公正競争規約、

社内のSOP(標準業務手順書)など、

すべての判断基準を「利己(自社の数字)」から

「利他(医師・患者への貢献)」へとシフトさせたとき、

法や規約はあなたを縛る制限ではなく、

正々堂々と価値を提供するための

「強い後ろ盾」

へと変わります。

 

私たちは知識を誇示する一方的な説明要員ではありません。

ルールという共通の土俵の上で、

質問を通じて医師の真の課題を引き出し、

ともに解決策を見出すパートナーです。

 

言葉の巧みさや機転の利いた切り返しではなく、

 

「この人は本気で私の役に立とうとしている」

 

と相手に感じさせる誠実な信念こそが、

最高の交渉術となります。 



ぜひ、ルールを味方につけ、

胸を張って、医療現場に本物の価値を届けていきましょう。

 

 

 

プロフィール

杉浦敏夫(すぎうら・としお)

1965年、長野市生まれ。名古屋大学工学部卒業後、国内の製薬会社に入社。

プロダクトマネージャーとして大型新薬の上市を手がけた後、学術部、プロダクトマーケティング部、臨床開発部、教育研修部の部長、営業部門では東京支店長などを歴任する。

日本人を対象としたエビデンス構築の必要性に着目し、多くの臨床試験の企画・運営を主導。そのうち代表的な2つの研究の結果は、国際的に権威のある医学専門誌に掲載され、国内の診療ガイドラインにも引用されている。

数多くのトップ・オピニオン・リーダーとの対話を通じて「質問の力」の本質に触れ、営業力強化の分野で著名な「質問型営業®」開発者・青木毅氏に師事。

現在は、第一線で活躍する営業職やマネージャーを支援する取り組みに注力している。趣味はカメラ、ソフトボール、ゴルフ、温泉旅行。

人気PodCast番組『青木毅の質問型営業』に著者として出演(第540回, 2025年9月19日配信)。

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