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【説明しない勇気92】エビデンスを語るほど医師に響かない?「売り込み」を卒業し、EBM時代に選ばれるMR・MSLの質問型交渉術

単なるデータ伝達者から脱却し、医師の真のパートナーになるために

製薬業界の最前線で日々のディテーリングや

学術活動に奔走されているMRやMSL、MA担当者の皆さん、

そしてチームの成果と育成を支えるマネージャーの皆さん。

医師との面談において、このようなもどかしさや課題を

感じたことはないでしょうか。


「最新の大規模臨床試験データやガイドラインの記載を

 熱心に説明したのに、医師の反応がどこか冷ややかだ」 


「論文の優位性やグラフをロジカルにプレゼンしたつもりなのに、

 最後は『分かった、検討しておくよ』と流されてしまう」 


「競合他社も同じようなエビデンスやデジタル資材を持って

 訪問してくるため、自社の強みが差別化できない」


どれほど優れたエビデンスが手元にあり、

流暢なトークで最新知見を伝えたとしても、

それが医師の心に届き、実際の処方行動や治療の選択肢へと

繋がらなければ意味がありません。


私自身、製薬会社の現役時代、最新の臨床試験データを

「これでもか」と提示すれば

ドクターの心が動くはずだと信じ込み、

一方的な説明に終始して空回りした

苦い経験が何度もあります。

しかし、数多くの交渉現場を経験し、

トッププレイヤーのスキルを分析する中で、

一つの重大な真実に思い至りました。


医師が求めているのは、単なる

「データの紹介」ではありません。

そのエビデンスが、目の前の患者さんの未来を

どう変えるのかという「意味と文脈」なのです。


今回は、エビデンスに基づく医療(EBM)の真の本質を理解し、

単なる情報伝達者から「医療の共創者」へと進化するための

戦略的コミュニケーション術について詳しく解説します。




EBMの真の構造と、製薬企業が果たすべき「3つの役割」

私たちが日常業務の中で向き合っている

「エビデンスに基づく医療(EBM:Evidence-Based Medicine)」

という言葉。

その本質を、皆さんはどのように捉えているでしょうか。


EBMとは、単に

「論文やガイドラインの数値に従って治療を行うこと」

ではありません。

EBMの本質は、以下の3つの要素を高度に統合して治療方針を導き出す

思考プロセスにあります。


  1. 最新の科学的根拠(エビデンス)
  2. 医療者の臨床経験や専門技能
  3. 患者さん個人の価値観や意向、生活背景

つまり、論文データが存在するだけではEBMは完結しないのです。

目の前の医師が持つ臨床での実感や悩みを聞き出し、

患者さんの背景に寄り添った上で、

医師が納得して治療を選択できるような情報提供を行って初めて、

EBMは現場で機能します。

このEBMの流れの中で、製薬企業(MR・MSL・MA)に求められる役割は

次の3点に集約されます。


  • 科学的に妥当で透明性の高いデータを提供すること
  • そのデータが「どの患者に、どのような場面で有効か」を文脈化して伝えること
  • 意思決定の現場において、医師から最も信頼される情報源であり続けること

かつて1980〜1990年代、急性心筋梗塞におけるISIS試験、

慢性心不全のSOLVDやCIBIS-Ⅱ、脂質管理の4S試験といった

世界的臨床試験が医療のパラダイムを転換させました。

日本においてもJ-LITやMEGA Study、JELIS、そ

して世界最大規模の二次予防試験となった

REAL-CADなどが実施され、科学的根拠に基づく治療が

臨床現場に根付いていきました。


私自身、かつて担当した大規模臨床試験の結果が

数年後に診療ガイドラインに引用され、

目の前の医療機関での治療方針が

劇的に変わった光景を直接目撃したことがあります。

そこにあったのは、単に「論文が発表された」という

数字の成果以上の重みでした。


それは、「実際の患者さんの予後や未来を変えた」

という揺るぎない事実です。

そして現在、リアルワールドエビデンス(RWE)やゲノム解析、

AI技術の進歩によって、医療は「万人向けの標準治療」から

「必要な患者さんに、最適な治療を、最小限の負担で届ける個別化医療」

へと急速に進化しています。


この時代の節目において、エビデンスを臨床現場の「血肉」に変える

架け橋こそが、現場に立つ皆さんなのです。




データ提供を「共感と解決策」へ昇華させる質問型アプローチ

論文やエビデンスは、ただ配布したりスライドで読み上げたりするだけでは、

実臨床に浸透していきません。

データの一方的な説明(説得)を捨て、

医師の臨床経験や悩みを引き出す

「質問型交渉術」を取り入れることで、

エビデンスは初めて生きた価値を持ち始めます。


AIやデジタルツールがどれほど進化しても、

最終的に医師の心を動かし、

患者さんに最適な治療を届ける決定打となるのは、

現場での人間味あふれる質の高いコミュニケーションです。




「三方よし」の視座を胸に、医療の未来を創る挑戦へ

私たちが日々の活動で追い求めるべき真のゴールは、

単なる自社の目標達成や市場シェアの拡大ではありません。


  1. EBMの3要素(エビデンス・臨床経験・患者の価値観)を正しく理解し、データに「意味」を与えて伝える
  2. 一方的なプレゼンを捨て、質問型話法で医師の臨床上の課題を引き出し、ソリューションとしてエビデンスを届ける
  3. 「顧客(医師)・企業・社会(患者)」のすべてにとって価値がある「三方よし」の姿勢を徹底する


私たちの行動のすべては、最終的に患者さんの笑顔や

健康な未来へと還元されていなければなりません。


自社の都合や単なるドクターの満足を超えて、

「この取り組みは、社会にとって本当に価値があるか?」

という問いを常に持ち続けること。


医師との対話の中で、

「あなたから聞いたあの情報が本当に役に立ったよ」

「あの薬のおかげで、諦めかけていた患者さんが元気に退院できたんだ」

と言われた瞬間こそ、EBMに貢献し、

社会に貢献した何よりの証であり、

製薬プロフェッショナルとしての活動の

真の到達点です。


過去の大規模臨床試験が築いた尊い礎の上に、

最新のエビデンスとテクノロジー、

そして皆さんの熱い誠実さを融合させていく新たな挑戦が、

今まさに始まっています。


明日からの訪問やWEB面談に向けて、

まずは「今日提供するデータは、

先生の目の前のどんな患者さんを救うのだろうか?」

と、自らに問いかけることから始めてみてください。

その高い志と問いかけの質の変化が、

医師からの深い信頼を生み出し、

医療の未来を確実に切り拓いていくはずです。


コンプライアンスを完全に守りながら、

医師から

「あなたと話すと新たな臨床の気づきが得られる」

と絶対的な信頼を寄せられるための

「質問型トークスクリプトの作成法」

や、チーム全体の資質を底上げする実践的なアプローチについて、

さらに深い学びを始めてみませんか?




プロフィール

杉浦敏夫(すぎうら・としお)

1965年、長野市生まれ。名古屋大学工学部卒業後、国内の製薬会社に入社。

プロダクトマネージャーとして大型新薬の上市を手がけた後、学術部、プロダクトマーケティング部、臨床開発部、教育研修部の部長、営業部門では東京支店長などを歴任する。

日本人を対象としたエビデンス構築の必要性に着目し、多くの臨床試験の企画・運営を主導。そのうち代表的な2つの研究の結果は、国際的に権威のある医学専門誌に掲載され、国内の診療ガイドラインにも引用されている。

数多くのトップ・オピニオン・リーダーとの対話を通じて「質問の力」の本質に触れ、営業力強化の分野で著名な「質問型営業®」開発者・青木毅氏に師事。

現在は、第一線で活躍する営業職やマネージャーを支援する取り組みに注力している。趣味はカメラ、ソフトボール、ゴルフ、温泉旅行。

人気PodCast番組『青木毅の質問型営業』に著者として出演(第540回, 2025年9月19日配信)。

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