【説明しない勇気18】「そうだね」で終わらせない!医師の本音を引き出す「3つの問いかけ」
医師の反応が劇的に変わる!対話を深める「魔法の3フレーズ」
製薬業界のMRやMSLの皆さんとお話ししていると、最も多く耳にする悩みの一つが「面談での会話が広がらない」というものです。
「先生に質問をしても『そうだね』『特にないよ』の一言で終わってしまう」「結局、こちらが用意した資料を一方的に説明するだけの時間になってしまう」……。私自身、製薬会社の現場にいたまだ若い頃には、冷や汗をかきながら沈黙を埋めるために必死に喋り続けていた記憶があります。
せっかくの貴重な面会時間。なんとかして先生の真意を引き出し、意味のあるディテーリングにしたいですよね。実は、高度な心理テクニックや複雑な営業トークを覚える必要はありません。たった「3つの言葉」を意識するだけで、対話の質は驚くほど深まり、先生の「本音」が見えてくるようになります。
今回は、今日から現場で使えるコミュニケーションの基本動作についてお伝えします。
対話の質を変える3つの問いかけ
医師とのコミュニケーションを「一方通行の情報提供」から「双方向の探索」へと変える鍵は、以下の3つの問いかけにあります。
1.「なぜ?」思考の根源に迫る
これは最も本質的で、相手の判断基準や価値観を浮き彫りにする強力な質問です。ただし、医師に対して「なぜですか?」とストレートに聞くと、詰問されているような圧迫感を与えてしまうことがあります。 実務では、「その背景を教えていただけますか?」「どのような理由から、そのように判断されたのでしょうか?」と、柔らかいクッション言葉を添えるのがプロの技術です。これにより、先生が大切にしている治療方針や、懸念しているポイントが明確になります。
2.「たとえば?」イメージを具体化し、共有する
「最近、副作用が気になる患者さんが増えていてね」と言われたとき、そのまま流していませんか? ここで「たとえば?」と一歩踏み込むことで、情報の解像度が格段に上がります。 具体的な症例をイメージとして共有できれば、「その場合の解決策」としての製品提案が、より的確で刺さるものになります。「たとえば、どのような患者さんに多いですか?」といった問いかけが、対話の質を格段に高めます。
3.「ということは?」話を整理し、未来へ繋ぐ
話が一区切りついたところで、「ということは、〇〇というお考えですね」と要約するのが一般的には良いとされています。しかしあえて要約せずに「ということはどういうことでしょうか?」と勇気をもってこちらが要約せずに相手に要約してもらいましょう。これは相手の話を正しく理解したいという「共感」のサインになると同時に、次の提案やクロージングへの自然な橋渡しになります。 先生が言葉を整理して話すことで、先生自身も「そうか、自分はこう考えていたんだな」と頭の中が整理される効果(オートクライン効果)も期待できます。
事実を引き出す「時系列」の魔法:思い込みの壁を突破する
「なぜ?」と問いかけたとき、先生から「なんとなく今の薬で安定しているから」といった表面的な回答しか返ってこないことがあります。これは先生自身が先入観や思い込みで答えている場合に多く見られます。
そんな時に有効なのが、「いつから?」「その時、何があったのですか?」という問い方です。
思考(なぜ)ではなく事実(いつ・何)を聞くことで、先生の記憶は具体的なエピソードへと戻ります。「そういえば、半年前にある患者さんでこんなことがあってね……」と語り始めたら、それが真の原因です。
事実に基づいた対話ができれば、MRやMSLとしての提案は「一般論」ではなく、その先生の「実体験」に寄り添った特別なものになります。このように、3つの言葉を軸にしながら問い方を変えるだけで、コミュニケーションの主導権を握りつつ、深い信頼関係を築くことが可能になります。
「教わる姿勢」が最高の交渉術になる
多くのMRが「何かを教えなければ」「説明しなければ」というプレッシャーを感じていますが、実は最高の結果を出す人は、誰よりも「先生から教わること」が上手な人です。
「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」の3つのフレーズは、先生の専門性や経験に対する敬意の表れでもあります。この基本動作を日常のディテーリングに取り入れることで、先生は「この人は私の話をよく理解し、共に考えてくれるパートナーだ」と認識してくれるようになります。
まずは明日の面会で、3つのうち1つだけでも使ってみてください。
先生の言葉の裏にある「真意」に触れたとき、あなたの仕事は単なる営業から、医療現場を支える真のディテーリングへと進化するはずです。
プロフィール
杉浦敏夫(すぎうら・としお)
1965年、長野市生まれ。名古屋大学工学部合成化学科卒業後、国内の製薬会社に入社。
プロダクトマネージャーとして大型新薬の上市を手がけた後、学術部、プロダクトマーケティング部、臨床開発部、教育研修部の部長職、営業部門では東京支店長などを歴任する。
日本人を対象としたエビデンス構築の必要性に着目し、多くの臨床試験の企画・運営を主導。そのうち代表的な2つの研究の結果は、国際的に権威のある医学専門誌に掲載され、国内の診療ガイドラインにも引用されている。
数多くのトップ・オピニオン・リーダーとの対話を通じて「質問の力」の本質に触れ、営業力強化の分野で著名な「質問型営業®」開発者・青木毅氏に師事。
現在は、第一線で活躍する営業職やマネージャーを支援する取り組みに注力している。趣味はカメラ、ソフトボール、ゴルフ、温泉旅行。
人気PodCast番組『青木毅の質問型営業』に著者として出演(第540回, 2025年9月19日配信)。
