【説明しない勇気90】案内状を配るだけでは人は集まらない!医師が自ら参加したくなる講演会を創る「4P設計」と質問型アプローチ
製薬会社のMRやMSL、MA担当者の皆さん、
そしてエリアのプロモーション戦略や
講演会の企画・管理を担うマネージャーの皆さん。
自社が主催する講演会やセミナーの集客において、
このような「手詰まり感」や
頭の痛い課題に直面したことはないでしょうか。
先生方に案内状をお渡しして
「ぜひご参加ください」と頭を下げても、
「当日の予定を見て検討しておくよ」と軽く流されてしまう
ノルマのために何とかアポイントを取り付けて
参加登録をしてもらったのに、
当日のドタキャンや離脱が多い
苦労して開催したのに、参加した医師から
「知っている話ばかりでためにならなかった」
と不満を残されてしまった
多忙を極めるドクターに対し、
「集客数が足りないから」と必死に
「お願い訪問」を繰り返し、参加を懇願する……。
私自身、こうした不毛な集客に疲弊し、
医局の前で途方に暮れた経験が何度もあります。
しかし、数々の成功事例を分析してきた今、
断言できることがあります。
講演会に人が集まらない最大の理由は、
MRやMSLの力の不足ではありません。
その企画自体に
「マーケティングの視点」が欠落していたり、
単なる一回限りの「イベント業務」として
処理されてしまっていることが多いのです。
今回は、お願い営業を即座に卒業し、
医師が自ら「参加したい」と望むような
講演会を創り出すための戦略的設計と
質問型交渉術について解説します。
単なるイベント業務からの脱却。講演会を成果に変える「4P」のフレームワーク
製品を一方的に売り込む営業から
「自然と売れていく仕組み」
を作るのがマーケティングであるならば、
講演会もまた「無理に呼び込む」のではなく
「自然と聴講者が集まってくる仕組み」
として設計されるべきです。
医師が講演会に参加しない理由はシンプルで、
「内容が自分に響かない」か
「自分の貴重な時間を削ってまで参加する必然性が感じられない」
かのどちらかです。
演題名が企業目線の抽象的な内容になっていたり、
同時期に似たようなテーマのWebセミナーが乱立していたりすれば、
多忙なドクターがスルーするのは当然の反応と言えます。
このズレを解消し、質の高い講演会を企画・運営するために
極めて有効なのが、マーケティング・ミックス(4P)
の考え方を講演会設計に応用することです。
1. Program(プログラム=製品・価値)
単に有名な演者を呼ぶだけでは不十分です。
「臨床現場のリアルな課題や悩みに即しているか」
「一方的な講義ではなく、症例検討やディスカッションなど
『明日からの診療に持ち帰れる知見』が得られるか」
を徹底的に追求します。
診療が終わった後でも無理なく参加できる
曜日や時間帯の設計も重要なプログラム要素です。
2. Price(費用・対価・参加価値)
その講演会の費用をいくらかけるのかということも重要ですが、
参加者にとっての「Price」とは、移動時間や診療後の疲労感を
差し出すというコストです。
そのコストを上回る「参加価値」を提示できているかが問われます。
認定専門医の単位取得はもちろんですが、
「自分の抱える難治症例の解決ヒントが得られる」
という目に見えない価値の最大化が必要です。
3. Place(開催形式・環境)
対面、オンライン、あるいはハイブリッド開催など、
ターゲットとする医師のライフスタイルやニーズに
最も合った形式を選択します。
オンラインであれば操作の簡便さやアーカイブ配信の有無、
対面であればアクセスの利便性など、
参加障壁を極限まで下げる環境設計が求められます。
4. Promotion(告知・集客活動)
単に案内状を1枚手渡すだけの単調な案内は卒業しましょう。
MRの個別訪問での対話、メール、eディテール、オウンドメディアなどを
立体的に連動させます。
案内状のデザインやキャッチコピーにも工夫を凝らし、
「なぜ今、このテーマを聞くべきなのか」という
臨床的意義をストーリーとして伝えるPR活動が必要です。
昨今は各種ガイドラインや規約の厳格化により、
講演会のテーマ設定やプロモーション表現にも
様々な制限がかかっています。
しかし、制約があるからこそ、この「4P」の視点で
細部まで考え抜かれた企画が、
他社との圧倒的な差別化を生むのです。
「案内状の手渡し」を「価値の提案」に変える!質問型話法による集客アプローチ
どれほど本社やエリアで素晴らしい「4P設計」の講演会を企画しても、
最終的に目の前の医師に参加の意思決定をしてもらうのは、
現場のMRやMSLのコミュニケーションスキル(話法)です。
ここで効果を発揮するのが、「質問型交渉術」を用いた
集客アプローチです。
案内状を見せて「ぜひ来てください」と説得するのではなく、
これまでにお伝えしてきた質問型のアプローチによって
医師の「臨床上の悩み」を浮き彫りにし、
その解決策として講演会を位置づけるのです。
質問型アプローチ①
「好意」を持って
「質問」し、その答えに
「共感」する。
質問型アプローチ②
次の順番で質問する。
「現状」→「欲求」→「解決策」→「欲求の再確認」→「提案」
質問型アプローチ③
「なぜ」、「たとえば」、「ということは」
の3つの言葉で相手の気持ちを深堀する。
講演会は「点」ではなく「線」。医師との信頼を深める戦略的拠点へ
講演会の成功とは、単に当日の参加者数の数字を
達成することではありません。
その場を通じて医師の製品理解や治療への疑問が解消され、
最終的に患者さんへの適切な処方や医療の質向上に
つながることこそが真のゴールです。
- 講演会を単なるイベント業務ではなく、自然と人が集まる「4P」のマーケティングとして設計する
- 一方的な「お願い訪問」を捨て、質問型交渉術で医師の臨床課題と講演会テーマを紐付ける
- 講演会をきっかけとして、その後のディテーリングやディスカッションへと続く「継続的な対話」を創り出す
あなたが現場を率いるマネージャーであるならば、
メンバーに対して「とにかく1人でも多く集めてこい」
と精神論を振りかざすのは今日で終わりにしましょう。
代わりに、
「この講演会は、担当エリアのどの先生の
どんな悩みを解決するために使う戦略拠点なのか?」
をメンバーと一緒に問いかけてあげてください。
「なぜこの会を開催するのか」という明確な意図を共有し、
質問型のアプローチで医師の懐深くに入り込むこと。
その知的なプロモーション活動の積み重ねこそが、
厳しい規約の時代においても他社を圧倒し、
医師から「あなただからこそ参加したい」
と選ばれ続ける最強の信頼関係を築き上げるのです。
コンプライアンスを完全に遵守しながら、
医師の参加意欲を爆発させる
「講演会案内スクリプトの作成法」や、
イベントを次のディテーリング成果へと確実に繋げる
「質問型交渉術」の技術について、
さらに深い学びを始めてみませんか?
プロフィール
杉浦敏夫(すぎうら・としお)
1965年、長野市生まれ。名古屋大学工学部卒業後、国内の製薬会社に入社。
プロダクトマネージャーとして大型新薬の上市を手がけた後、学術部、プロダクトマーケティング部、臨床開発部、教育研修部の部長、営業部門では東京支店長などを歴任する。
日本人を対象としたエビデンス構築の必要性に着目し、多くの臨床試験の企画・運営を主導。そのうち代表的な2つの研究の結果は、国際的に権威のある医学専門誌に掲載され、国内の診療ガイドラインにも引用されている。
数多くのトップ・オピニオン・リーダーとの対話を通じて「質問の力」の本質に触れ、営業力強化の分野で著名な「質問型営業®」開発者・青木毅氏に師事。
現在は、第一線で活躍する営業職やマネージャーを支援する取り組みに注力している。趣味はカメラ、ソフトボール、ゴルフ、温泉旅行。
人気PodCast番組『青木毅の質問型営業』に著者として出演(第540回, 2025年9月19日配信)。
